「女性研究家から見た鈴木商店」シンポジウムが開催されました。

2019.9.25.

P1060658.jpg一昨年の「神戸開港150年記念イベント」開催以来、鈴木商店に関係する講演会・勉強会(主催:神戸市)が継続して開催され好評を博していますが、この度初めての試みとして、女性のみのシンポジスト・コーディネーターによるシンポジウムが開催されましたのでご紹介します。

4ninnnojyoseijin.jpg【「女性研究家から見た鈴木商店」シンポジウム 概要】
日時 : 令和元年9月21日(土)  14:30~16:00

場所 : 神戸ポートオアシス5階 503会議室(神戸市中央区新港町5番2号)

主催 : 神戸市(港湾局 計画部 港湾計画課)

【シンポジスト3名のプロフィール】
P1090324 (1024x769).jpg野邑(のむら)()栄子(えこ)
神戸大学大学文書史料室室長補佐。大阪出身。神戸大学大学院総合人間科学研究科修了。博士(学術)。2011年まで神戸大学百年史編集室専任講師として「神戸大学百年史」の編集に従事。日本近代史が専門。著書「陸軍幼年学校体制の研究―エリート養成と軍事・教育・政治」(2006年)、「ビジュアル版神戸大学物語」(共著、2008年)、「神戸大学百年史 通史II(新制神戸大学史)」(共著、2010年)など。


P1090338 (1024x769).jpg小林由佳氏
神戸新聞社論説委員。1990年神戸新聞社入社。淡路総局、社会部、経済部などの記者を経て、2014年~17年経済部長兼大阪編集部長。2016年4月から神戸新聞の紙面で1年間連載された「遙かな海路~巨大商社・鈴木商店が残したもの」の取材班の1人。2017年3月より現職。地域経済、社会保障、教育問題などをテーマに社説やコラムを担当。



P1090342 (1024x769).jpg◯村田裕子(ゆうこ)
脚本・演出家、劇団LiveUpCapsules(ライブアップカプセルズ)主宰。大学卒業後、同劇団創設。多面舞台(多面客席)の舞台作りにより、舞台と観客との垣根を取り払う表現方法を目指す。2005年"遊園地再生事業団"演出助手。2011年J-Stage Navi Produce"プールサイド・ストーリー"演出助手。2014年ニューヨーク市で行われた演劇フェスティバ FringeNYCに参加。2015年"せんがわ劇場演劇コンクール"にて戯曲賞受賞。2017&2018年"王子小劇場"主催「佐藤佐吉賞」にて優秀戯曲賞受賞。

<公演履歴>
2017.1.20~29 王子小劇場「スパイに口紅」、2018年3月「見晴らす丘の紳士」(東京・王子 北とぴあペガサスホール)、2018年7月「彼の男 十字路に身を置かんとす」(東京・下北沢 小劇場楽園)、2019年5月「軽佻浮薄な謀反を起こせ」(東京・新宿 サンモールスタジオ)など。なお、「彼の男 十字路に身を置かんとす」については来年4月、東京・神戸での再演が決定している。(末尾のチラシご参照。再演の詳細については、後日当記念館の編集委員会ブログでもご案内予定)

【コーディネーター(司会・進行)・村上()百合(ゆり)氏のプロフィール】
P1090312 (1024x769).jpg神戸新聞社姫路本社代表。1984年神戸大学経済学部を卒業後、神戸新聞社に入社。社会部、但馬総局、経済部記者を経て、1997年から8年間論説委員。2001年に神戸大学大学院経済学研究科を修了。2004年に経済部デスク、2009年から4年間、経済部長を務めた。2013年から2年間は子育て支援などの事業も担当。その後、論説副委員長、東京支社長を経て、2019年3月から現職。



講演会は主催者である港湾局 計画部 港湾計画課・田中謙次係長の司会で始まり、3名のシンポジストとコーディネーターが紹介されました。

P1090346 (1024x769).jpg続いてコーディネーターを務める村上氏より自己紹介、鈴木商店の概要、神戸新聞の連載「遙かな海路~巨大商社・鈴木商店が残したもの」(2016年4月~2017年3月末)にまつわる同紙と当記念館の関係、神戸新聞社の初代社長・松方幸次郎と金子直吉の盟友関係等の紹介に続いてシンポジウムの進め方について説明が行われました。

シンポジウムの冒頭、まずシンポジスト3名により自己紹介、プレゼンテーションの要旨が説明され、続いてパワーポイントによる資料を使用し、3名それぞれのテーマに沿ってプレゼンテーションが行われました。

【3名のシンポジストによるプレゼンテーション】
野邑理栄子氏
テーマ: 高商派出身者と鈴木商店
mizusimatetuya.PNG鈴木商店は貿易商社体制を拡充していく中で、「学卒者」の採用を本格始動させました。学卒者の主な供給源は神戸高等商業学校(通称:神戸高商、現・神戸大学)で、彼らは「高商派」と呼ばれ、鈴木商店の発展と近代化を牽引しました。

野邑氏からは鈴木商店の歴史の概要に続いて、明治35(1902)年に全国2番目の官立高商として設立され、初代校長・水島銕也(てつや)[左の写真]によってその基礎が築かれた神戸高商の特徴、神戸高商出身者の鈴木商店入社状況等について数々のエピソードを交えて解説が行われました。

プレゼンテーションの概要につきましては、末尾の関連資料をご覧下さい。

小林由佳氏
テーマ: 鈴木商店が神戸の発展に如何に貢献したか
suzukiiwajirou.PNG鈴木商店は大番頭・金子直吉による大躍進の時代は言うに及ばず、すでに創業者・鈴木岩治郎[左の写真]の時代から事業を通じて神戸の発展に大きく貢献していました。

小林氏からは鈴木岩治郎、金子直吉の活躍に加えて、地元神戸に教育の種をまいた女店主・鈴木よね にもスポットを当てて、数々のエピソードも交えて解説が行われました。

プレゼンテーションの概要につきましては、末尾の関連資料をご覧下さい。



村田裕子氏
テーマ: 金子直吉の人物像&人間掌握術
kanekonaokiti6.PNG金子直吉については数々の逸話(エピソード)や秘話が語り継がれていますが、多くの関係者の言葉からは仕事には人並み外れた情熱を示す一方で、情愛細やかな慈父のような一面をあわせ持つ人物像が浮かび上がって来ます。

村田氏は金子に対する関係者の言葉を引用し、その人物像とあわせて部下を中心とした人心掌握術にも迫りました。

プレゼンテーションの概要につきましては、末尾の関連資料をご覧下さい。


最後に、村上氏からシンポジウムのタイトル「女性研究家から見た鈴木商店」に因んで、女性から見た鈴木商店という観点から特に思うところについて各シンポジストに問いかけがなされました。

これに対して、各氏より次の発言がありました。

野邑氏
「やはり、鈴木よねさん[下の写真]の凄さですね。鈴木商店を背負っていくよねさんが金子直吉らの番頭にすべてを託して周りの人々を信頼することができる懐の広さ。それは、なかなか出来ることではありません。特に、もし鈴木商店がつぶれたら自分が首を(くく)らねばならないという状況にあるにもかかわらず、部下を信頼して任せることが出来たよねさんの度量の広さを尊敬します」

小林氏
suzukiyone.PNG「やはり、よねさんは教育の大切さと人を育てることの大切さを何よりも痛感していたと思われます。一方でよねさんは厳しい目を持っており、金子直吉を見込んだからこそ任せたのであって、ただ単に心が広いだけではなく、鋭い嗅覚をあわせ持っていたと思います」

「次のよねさんの言葉は、女性も枠にとらわれずに広い世界を見なさいと女子学生達に(げき)を飛ばしています。静かだけれども激しい情熱が鈴木商店を支えて大きくした原動力だったのではないか、と思っています」


・鈴木よねが神戸女子商業開校時のパンフレットに寄せた言葉
「我が国の女子も行く行くは、広き大切なる舞台に立ち働くやうになり来たらんこと火を見るより明らかなり」

村田氏
「私が注目するのは金子直吉の妻の徳さんです。金子自身は『女房子の名を忘れても手形の期日を忘れるな』という人でした。実際、金子が電車の中で本を読んでいる時に、席を譲られた女性が自分の妻であったことを自宅の中に入るまで気付かなかったというエピソードがあります。その二人の共通の趣味は俳句でした。やはり金子家の大黒柱は徳さんだったのではないでしょうか。さらに、鈴木商店、日本の土台を支えていたのも女性だったのではないでしょうか」         

以上の各氏の発言により、鈴木よね、金子徳(直吉の妻)をはじめとする女性の存在、女性の活躍なくして鈴木の発展も神戸の発展もなかった、という共通認識が示されたと言ってもいいでしょう。

P1090344 (1024x769).jpgシンポジウムは、あらかじめ予約を申し込まれた約90名(関係者を含む)の方の参加をいただき、参加者は女性ならではの感性が随所に感じられた登壇者の発言を通じて、当時兵庫県唯一の高等教育機関であった神戸高商の存在、鈴木商店による神戸の発展への多大な貢献、事業には人並み外れた情熱を示す一方で、情愛細やかな一面をあわせ持つ金子直吉の人となりなどに熱心に耳を傾け、大好評のうちに終了しました。

kanootokokoubekouentirasi2.PNGシンポジウムの終りに当たり、司会の田中係長より次の第2回講演会等の紹介とあわせて、来年4月18日(土)、19日(日)の両日、神戸でシンポジストの村田裕子氏作・演出による舞台「彼の男 十字路に身を置かんとす」が再演されることが紹介されました。

当日、会場には舞台「彼の男 十字路に身を置かんとす」のポスター、昨年11月に金子直吉の生誕地・高知県仁淀川町で開催された第3回金子直吉翁顕彰イベントのポスター「仁淀川の輝き たゆみなく」、「仁淀川」観光マップが掲示されました。

さらに、シンポジスト・村田裕子氏より「彼の男 十字路に身を置かんとす」神戸公演チラシ(左)が、太陽鉱工より小冊子「鈴木商店物語」が、仁淀川町より同町関連の冊子が、北九州市門司区役所より「大里地区ガイドマップ」がそれぞれ用意され、参加者の皆様はこれらの資料を携えて帰路につかれました。

tennjibutu.jpg第2回講演会の開催について
第2回講演会は10月26日(土)14:00~15:00、齋藤尚文氏(兵庫県立国際高等学校教諭、博士[学術])による講演(演題: 鈴木商店の海運事業 ~鈴木商店の船舶事業の原点・南満州汽船から帝国汽船、国際汽船、カネタツ海運まで~)を予定しています。

今後の講演会のお申込みにつきましては、神戸市の広報誌"KOBE"や同市のホームページの記者発表資料などをご覧下さい。

下記の関連資料・関連リンクもあわせご覧下さい。

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