帝国興信所が作成した「鈴木商店調査書」シリーズ⑯「浪華倉庫株式会社」(調査書P88~89)をご紹介します。

2025.5.18.

「鈴木商店調査書」をご紹介するシリーズの16回目です。

hujitasukesiti.png浪華倉庫は、鈴木商店が大正6(1917)年2月に当時 "大阪五大倉庫の一つ" と言われた安田銀行の倉庫部「安田倉庫」を買収し、改組して設立しました。その後カネ辰・藤田商店の藤田助七(左の写真)も同社に出資し、鈴木・藤田の両辰巳屋の事業として運営され、社長には藤田助七が就任しました。

大正9(1920)年以降、同社は下関(馬関倉庫を合併)、横浜(鈴木商店製油工場跡地を買収)、小樽(鈴木商店小樽支店の所有倉庫を譲り受ける)の3支店と土地部(*)を順次新設しました。
(*)土地部は、鈴木商店が全国各地に所有していた土地・建物を管理するため設けたもの。

鈴木商店経営破綻(昭和2年4月)の後、浪華倉庫は台湾銀行の管理下に置かれ、昭和8(1933)年に澁澤倉庫に吸収合併され今日に至っています。

当時の浪華倉庫の主要保管貨物は、大阪の綿糸布・綿織物・洋紙・木材・鉄材、神戸の葉たばこ、横浜の鮭鱒缶詰、関門の砂糖・米・パルプ等であり、鈴木商店破綻後においても、三井、三菱、住友の三大倉庫には及ばないものの、その経営規模、保管残高、業績のいずれにおいても全国有数の倉庫でした。

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近年観光で賑わう北海道・小樽の運河倉庫の一角に残る⼤正14(1925)年に建てられた大規模な木骨石造の澁澤倉庫(旧・浪華倉庫小樽支店)は「小樽運河食堂」として再製され、小樽市の歴史的建造物にも指定され観光スポットとして賑わっていましたが、主要飲食店の撤退により令和2(2020)年に閉店。

平成24(2012)年4月よりニトリグループが開設した「小樽芸術村」の西洋美術館(近代フランスの陶磁器・ガラス工芸品の展示館)(左の写真)として再生されています。

なお、調査書の「沿革 現況」には、次のように記されています。

「同社は鈴木商店がその積極的政策に基づき財界で活躍の結果、倉庫業の前途に目を向け、適当の既設事業を物色中、大阪安田倉庫との売買契約が成立し、6年6月に買収して資本金百万円払込済とし、名称を浪速倉庫株式会社(原文ママ。正しくは "浪華倉庫")と改称し、引続き一般倉庫業を経営し好況を呈している。」

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