鈴木商店こぼれ話シリーズ㊵「松方コレクションと鈴木商店」をご紹介します。

2019.5.22.

Monet_Water_Lilies_suiren.jpg松方コレクションは、実業家・松方幸次郎が大正初期から昭和初期(1910年代から1920年代)にかけて収集した美術品コレクションである。(左の画像はモネ作「睡蓮」1916年) 

松方幸次郎が美術品の収集を始めたのは、第一次大戦中のロンドン滞在時のこと。イギリス、フランス、ドイツなどヨーロッパで西洋絵画・彫刻、日本の浮世絵を買い集めた。自社(川崎造船所)の貨物船(ストックボート)の売り込みと鉄材等資材の買付のため大正5(1916)年3月から大正7(1918)年7月までロンドン長期滞在に当たって、鈴木商店の金子直吉は、ロンドン支店長・高畑誠一に指示して同店内に松方の専用室を用意したほか収集資金の立替えの便宜をも図った。

松方が収集した美術品の数は1万点を超え、当時3,000万円、現在の価値で500億円を超えるともいわれている。また鈴木商店が立替えた金額はロンドンで52万ポンド、パリで20万ポンドともいわれている。松方の知人でフランスの浮世絵収集家より買戻しに協力した画商・岡田友次のメモによればが鈴木商店ロンドン支店が「松方氏勘定」として支出した前記の金額が残されている。52万ポンドは、現在(1990年頃)ならざっと110億円余りになろうと。パリの20万ポンドを含め、鈴木商店が立替えた総額は150億円に上ったことになる。(「火輪の海」神戸新聞社編)

松方が収集した美術品のうち、かなりの数(約950点)がヨーロッパに残されていたが、ロンドンの倉庫(パンテクニカン倉庫)にあった作品群は昭和14(1939)年の火災で殆んどが失われた。一方、パリに残された約400点の作品は、リュクサンブール美術館(当時のフランス現代美術館)の館長レオンス・べネディットに預けられ、彼が館長を兼任したロダン美術館の一角に保管されていた。

 この度、開館60周年を迎え、松方コレクション展を開催する(2019.6.119.23)国立西洋美術館では、ロダン美術館より鈴木商店が立替えたとする小切手並びに支払通知書のコピーを入手したことが明らかになった。今回ロダン美術館にて発見された小切手は、バークレーズ銀行ロンドン支店発行、Cox商会(パリ)を支払代理人(鈴木商店代理人)としたもので、小切手の支払先は、ロダン作品の収集を委託したレオンス・ベネデッィトと記されている。また鈴木商店ロンドン支店が発行した支払通知書類の宛先は、ベネディットと並びロダンの名が記載されており、いずれも1919年以降の日付で発行されている。(この書簡の一部は作品一覧メモと共に展示公開されている。)これにより、鈴木商店がコレクション収集資金の立替えをしたことの事実が裏付けられた。なお、この支払が行われた時点では、ロダンは既に他界(1917年)しており、支払通知書に記されているロダンは遺族と思われる。

松方がロダンから購入した作品は、彫刻、素描、版画等78点あるとされており、有名な「考える人」や「青銅時代」などロダンの代表作のほとんども鈴木商店が立替えたことが明らかになった。ロダン作品を含め、鈴木商店が立替えた彫刻、素描等は100点を超えている。

さらに同コレクションのうち、絵画についてもクロード・モネの「舟遊び」や、ルノワールの「木かげ」、ウジェーヌ=ルイ・ジローの「裕仁殿下のル・アーヴル港到着」等々140点にのぼる作品についても鈴木商店の資金協力が明らかになった。

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