経済野話(現代訳・抄訳)③「米の経済的地位」

1.「米」は、我々日本人の毎日の生活に直接重大な関係を有し、我々の生活とは離れることのできないもの。「米」の価格の高低 は、直ちに国民の生活に影響を及ぼし、米の価格から他の副食料品にも関係を有する。

米の生産額は、わが国の歴史上、経済社会と密接な関係を有し、国民生活の基調を成すものである。

2.わが国の歴史上、米は常に政治経済と重要な関係を有し、国民生活の安定は米と最も密接な因果関係にある。封建制度で は、米を単位とし、標準とする俸禄制度であったように米の問題は、常に直接・間接にその社会のアンダー・カレント(底流)とな って来た。

3.明治新政府になって、従来の米納すなわち実物収納を改めて金納制度に改革され、同時に従来の小作人に土地所有権が認められ地主となった結果、地価に伴う金利問題は後に米価問題を生ずることとなった。

また新たに生じた小作人は、その収益を新地主に大半を取られることから米価を高くする必要が起こり、現在の米価調節問題の困難さは、実に維新後の改革に起因する。地価と金利の関係が米の価格に影響を与えている。

米の生産費中に高い金利が含まれていることが、わが国の米価が外国のそれに比べて高い主な原因となっている。

4.わが国においては、財界の景気は常に米作の豊凶いかんによって著しい影響を受ける。

5.省略。

6.わが国の物価指数は、欧米と異なり三つの要素に左右される。即ち、

(1) 英米の物価指数を構成する要素と同じ物価 (2) 米価 (3) 銀価

我が国では、銀相場が高くなると、支那からの大豆が高くなり豆粕が高くなる。これによって醤油も味噌も油も、天プラも、インド、南洋方面から来る原料食料品等も高くなる。また、銀が高くなれば支那、満州、南洋一帯の購買力が増すから日本からこれらの国に輸出される物資も高くなる。わが国の物価の上に銀の及ぼす影響は非常に大きい。

米価について、従来わが国では、米が高ければ諸物価が高いと云われて来た。さらにわが国の労賃は、米価に左右されるという事情もあった。米価を適度に調節することは国政上の一大用件といえる。

7.わが国のように米と物価の関係が殊の外深い経済組織の国においては、「経済社会の調節方法として米をもってすべし」という考えは、一理あるかも知れない。一定量の貯蔵米を設けることは必要であろうと考える。

8.もし、米が凶作になり米価が暴騰した場合、政府による貯蔵米があれば米価を調節することが可能となろう。

◎鈴木商店関連資料「経済野話」(原文・e-book)

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