羽幌炭砿にまつわる話シリーズ⑭「羽幌炭砿の20年を振り返って(羽幌炭砿鉄道専務取締役 朝比奈敬三)」

初期は低迷時代  ― 今は合理化の時代 ―

七月十日をもってわが創立二十周年の記念日を迎える。誠にお目出たい次第である。昭和十六年、丁度戦時中に誕生せる炭鉱として避遠の地に位しながらよく成長し、抜群の成績を挙げるに至ったことは真にその例少ないといわれている。

いまこの二十年をふり返ってみれば、これを「低迷時代」、「苦悩時代」、「合理化時代」の時期に分けることができる。開発当初は低迷時代といってもよろしく、すなわち物資も乏しく人材も払底し徒らに露頭を追い、自然発火を起していたように思われる。終戦後は労働問題が全国的に混乱に陥り、この山にもストが頻発した。経労とも苦悩の日が続いたのである。二十五年の長期ストを契機として合理化は着々進捗し、ついに今日の姿となったのである。合理化時代と称してもいいのではなかろうか。

「炭坑は生きている」とよくいわれている。炭鉱を経営するもの、炭鉱に働くものは何をおいても炭鉱を愛し、これが成長に思いを致さなければならない。われわれのユメが実現せる今日、さらに第二の理想境に向って全従業員が進軍を開始せねばならない。今後の十年こそ石炭界は刮目(かつもく)に値するものと思う。皆さんの一段のご奮闘をお願いする所以である。

(昭和35年7月10日付羽幌炭砿の社内報「石炭羽幌」より)

羽幌炭砿にまつわる話シリーズ⑮「羽幌炭砿の20年を振り返って(羽幌炭砿鉄道常務取締役 嶋内義治)」

  • 朝比奈敬三

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