④-(1)佐賀市歴史民俗館(旧福田家住宅)

佐賀紡績の創業期を支援した佐賀を代表する実業家・福田慶四郎

佐賀市歴史民俗館では、佐賀市に残る歴史的建造物を市の財産として後世に伝えるため整備・保存している。

平成9(1997)年に旧古賀銀行、旧古賀家、旧牛島家の3館が開館、その後平成12(2000)年に旧三省銀行と旧福田家が追加開館した。これら5館はすべて佐賀市の重要文化財に指定されており、観光・見学施設として無料で公開されている他、コンサートや展示といったイベント会場としても、広く利用されている。さらに平成28(2016)年4月より、旧森永家、旧久富家が追加され、佐賀市歴史民俗館は7館により構成されている。なお、旧森永家、旧久富家は、佐賀県遺産に登録されている。

これら民族館のうち、古賀家三代目・古賀善兵衛、福田家・福田慶四郎は、佐賀紡績の発起人、創立委員・役員として縁の深い人物でもある。

福田慶四郎は、慶応3(1867)年生まれ、明治末期から大正期・昭和初期にかけて、佐賀を代表する実業家として活躍した。海運業で財を成した後、佐賀セメント、佐賀軌道会社の設立に尽力し、朝日商会・佐賀水産・福多商会・九州板紙・佐賀紡績・関門窯業・九州麻糸紡績・日本電気鉄工の経営に当たった。さらには、百六銀行の頭取を務め、佐賀商工会議所の会頭を3期、佐賀市議会議長を務め、数多くの企業を経営した。設立時の佐賀紡績には、取締役として地元を代表して経営に加わった。

旧福田家住宅は、福田慶四郎の居宅である。大正6年(1917)9月3日に起工し、翌7(1918)年10月25日に落成したと、棟札に記されており、戦後の一時期は佐賀県議員会館として利用されたこともある。

入母屋造り二階建ての主屋を中心に、和洋それぞれの様式の応接室や数奇屋造りの茶室などを配し、南側には庭園、東側には土蔵が設けられている。建物の内部は、細部に至るまで丁寧な造りであり、接客のために多様な空間が用意されている。また、落ち着いたたたずまいの中に、華やかなアクセントがちりばめられ、端正な中に華麗な表情を見せている。
江戸期に完成した伝統的建築技術は、近代には技術と芸術がその頂点を極めたとされる。この旧福田家住宅はこうした特徴をすべて備えた、大正期の近代和風建築である。

関連資料

  • 旧福田家住宅
  • 福田慶四郎
  • 旧福田家住宅に掲げられる説明板

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