①南朝鮮鉄道

鈴木商店の南朝鮮産業開発の橋頭堡

本社:朝鮮慶尚南道(キョンサンナムド)馬山府(現在の韓国慶尚南道昌原市(チャンウォンシ))

設立:大正9(1920)1

朝鮮南部「馬山(マサン)府~木浦(モッポ)」間の産業開発ならびに交通目的のため、鈴木商店京城支店長・小山庄三が発起人となり、大正9(1920)1月設立。金子直吉によって社長には坂出鳴海(明治9(1876)年~昭和3(1928)年)が起用された。    

坂出は、高知県出身、元大蔵省技師で朝鮮総督府土木局工務課長の経歴があり、鈴木商店の幹部・楠瀬正一の次男。また、坂出の妹(楠瀬の次女)・龍子は、依岡省輔の妻であり、鈴木商店との繋がりが強い。設立時の他の役員は、専務に土屋新兵衛、取締役に長崎英造、西岡貞太郎、小山庄三、岡本良太郎、藤田謙一、監査役に金光庸夫が就任した。

大正10(1921)年9月30日当時の主要株主は、金光庸夫(大正生命、日本教育生命)、鈴木よね、山下亀三郎(山下合名)など鈴木関係者で45%を占めた。また佐賀紡績で関係が深まった野口能毅(佐賀市長)が株主に名を連ねているのが注目される。

大正11(1922)年から14(1925)年までに「慶南線(馬山~晋州)」70km(現在の慶全線の一部)、「全南線(松汀里~潭陽)」36.4km(現在の光州線の一部)が開通。この間、大正12(1923)年9月1日、同鉄道を含む私有鉄道6社が合併して「朝鮮鉄道(朝鉄)」が発足。坂出は、新会社の取締役に就任。同時期官営鉄道として「朝鮮総督府鉄道(鮮鉄)」が朝鮮全土に運行されていた。

朝鉄・慶東線(現在の大邱線、中央線、東海南部線の一部)や慶北線などは後に朝鮮総督府鉄道(鮮鉄)に買収され、また他の路線も民営鉄道会社に売却されたが、現在、旧・朝鉄路線はKORAIL(韓国鉄道公社)などの路線の一部区間に残り、営業を続けている。

(「南朝鮮鉄道」には、昭和2(1927)年に設立され、東武鉄道創始者・根津嘉一郎が社長に就任した同名の私有鉄道があるが、別会社である。なお、この新生・南朝鮮鉄道は、昭和11(1936)年に総督府に買収され、官営「松麗線」として組み込まれた。)


関連資料

  • 南朝鮮鉄道営業報告書
  • 朝鮮総督府鉄道(鮮鉄)
  • 坂出鳴海

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