鈴木商店こぼれ話シリーズ⑨「鈴木商店と大名庭園」をご紹介します。

2017.6.15.

1064中津万象園.jpg香川県丸亀市の名勝「中津万象園」が鈴木商店と浅からぬ縁があったことはあまり知られていない。「栗林公園」と並ぶ大名庭園として知られる「中津万象園」は、丸亀二代目藩主の京極高豊により元禄元(1688)年に築庭された面積5ヘクタールの回遊式庭園で、歴代藩主が丸亀城内より出かけては茶会や詩会を催したといわれている。

"万象園"の由来は、森羅万象、即ち宇宙に存在するすべてのものを意味し、それらを合わせ持つ庭園から名づけられたという。京極家先祖の地、近江の琵琶湖を象った八景池を設け、近江八景になぞらえて八つの島を配して島々を橋で結んだ回遊式庭園である。

また園内には、フランス絵画を常設展示する平屋数寄屋風絵画館、古代オリエントの土器・陶器・ガラス器を展示する陶器館を擁する「丸亀美術館」が併設されている。さらに歴代藩主が親しんだ茶の湯を楽しめる茶室も再現されている。

同庭園の変遷を土地台帳から見ると、明治期に入り京極家の手を離れ、多度津の富豪・竹田氏の所有となり、大正7(1918)年に兵庫県芦屋の実業家を経て同年、鈴木商店(神戸市東川崎町)の所有となっている。その後、鈴木商店破綻により昭和2(1927)年12月に系列の浪華倉庫に所有権が移転され、さらに昭和9(1934)年から昭和11(1936)年までは蓬莱不動産(神戸市海岸通の鈴木商店内)の所有となっていた。鈴木商店の財務事情から頻繁に所有権が移り変わっていることが読み取れる。18年間という短期間ではあったが、鈴木商店が丸亀の大名庭園を所有していたことは貴重な情報である。

現在、「中津万象園」は、「公益社団法人中津万象園保勝会」によって運営管理されている。

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